ジャバラ設計者のよもやま話

技術屋の心眼

芸術:芸術の大半は退廃的で瑣末なもので、おそらく役に立たない。
技術:ハードサイエンスの持つ厳密性、客観性がある。
芸術家として創作の才能を持つ人は一般に役に立つ発明の能力を持っている
(ディヴィド・パイ:イギリスのデザイナー)
 設計技術者は芸術的センスが必要。
心の中で思い描いた形をスケッチで表さなければならない。そしてそれは視覚だけでなく触覚、または嗅覚までを感じなければ
ならない。また、工学的知識で決定を下す際に、解析的な計算を行うがそれは直観とか適切さについてのセンスが必要になる。
 製作技術についての知識と体験
物を作るのは現場の作業者であって、その作業の正確さを知らなければならない。その為には、実地体験が必要で、その手順や、
困難さ、製作精度を学ばなければ、心の中において製作することは不可能である。

(下記は1977年8月26日にサイエンス誌に掲載された論文を本にした「技術屋の心眼」の一部である。ES・ファーガソン:著 
藤原良樹・砂田寿吉:訳)平凡社発行
序文より
 技術に携わる人々が構想している物体の特徴や特質の多くは計算では明確に表現することはできない。それゆえ心の中で視覚的
(ビジュアル)で非言語プロセスによって処理されることになる。
ある機械について考えるとき一つの動的プロセスをなす各段階を順次たどりながら推論を進めていけば、心の中でその機械を始動
させることができる。いくつかの要素を組み合わせて新しい機械を生み出す。
工学分野の設計者はまだ存在していない装置を心の中で組み立て、操作できるのである。
心眼は極めて進化した器官であり、視覚的よる記憶の内容をよみがえらせるだけでなく、心の中での思考に必要な新しいイメージ
や修正されたイメージも形成してくれる。

設計者が下す決定のうち、膨大な時間を費やして学校で学んだ計算の類いに基づいてなされるものはわずかな割合にしかないと
いうことを知ることになる。工学の特質を理解しようとするなら、この看破されているけれども重要な思考様式を正しく認識しな
ければならない。


工学の特質 第1章
職人の方法
あるものを作り出すとき、それはアイデアとして存在する。
それが鮮明な構想図となっている場合もあるだろうし、単に可能性をもったひらめきに過ぎない場合もあるだろう。アイデアが
頭の中にあれば、直ちに製作に入ることができる。
要求されるのは、材料とそれを望みの物に変えるための必要な道具と腕だけである。
技術者の方法
製作しようとするアイデアが職人の頭の中でなく、技術者の頭の中にある場合には、製作する作業者にその構想を説明する手段が
必要となってくる。
技術者は自分の頭の中にあるものを作業者に伝えるのに図面を利用する。

職人の直接的な設計と、技術者の設計図に違いがなく、設計は一つのアイデア、時には明確な、あやふやから始まる。そのアイデア
は心の中のスクリーンに映し出さし「心眼」によって処理する。

心眼(マインズ・アイ Mind’s eye)
心眼は思い起こされた現実のイメージと思い描いた工夫・イメージが存在する場所であり、信じられないほどの能力を持つ不思議な
器官である。

2025/5/14 HW

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